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東京地方裁判所 昭和53年(行ク)73号 判決 1987年4月27日

東京都調布市緑ヶ丘二丁目一二番三七号

原告

坂田健一

右訴訟代理人弁護士

盛岡暉道

須合勝博

東京都府中市分梅町一-三一

被告

武蔵府中税務署長

岩澤正

右指定代理人

山崎まさよ

大原豊美

藤田忠志

佐藤敏行

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五〇年三月一四日にした原告の昭和四六年分ないし昭和四八年分の各所得税についての各更正並びに昭和四六年分の所得税についての無申告加算税の賦課決定並びに昭和四七年分及び四八年分の各所得税についての過少申告加算税の各賦課決定(ただし、いずれも異議決定及び審査裁決により一部取消し後のもの)をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二請求原因

一  原告は、左官業を営むいわゆる白色申告者であるが、原告のした昭和四六年ないし昭和四八年分の各所得税についての各確定申告(ただし、昭和四六年分については期限後申告であり、それに伴い別表一1の符号2の無申告加算税の賦課決定がされている。)これに対する各更正(以下「本件各更正」という。)それに伴う無申告加算税(昭和四六年分。別表一1の符号3のもの。)及び過少申告加算税(昭和四七年分及び同四八年分)の各賦課決定(以下「本件各賦課決定」といい、本件各更正と合わせて「本件処分」という。)、これに対する各異議申立て及び各審査請求並びにその異議決定審査裁決の経緯は、別表一1ないし3記載のとおりであり、原告はいずれも適法に不服申立てを経由している。

二  被告が本件処分(ただし、いずれも異議決定及び審査裁決により一部取消し後のもの。以下同じ。)は、次の点に不服がある。

1  本件処分は、次のとおり、被告の違法な税務調査手続に基づくものである。

(一) 税務調査の必要性の不存在

税務職員による調査は、その必要性があるときに限り許される(所得税法二三四条参照)ところ、被告の行つた調査はその必要性を欠く違法があり、また、調査を開始するに当たりその必要性を原告に告知しなかつた違法がある。

(二) 違法な反面調査

所得税法二三四条一項三号による反面調査は、納税者の調査だけでは課税標準及び税額等の内容が把握できないことが明らかとなつた場合に限りその限度で行うことが許されるところ、被告は、原処分時においてすでに原告からの収支状況を明らかにしうる完全な資料を提示されていながら、これを全く検討しようとせず、いきなり反面調査に及んだもので、反面調査が許される限度を逸脱した違法がある。

2  推計課税の必要性の欠如

被告は、前記のとおり原告から原告の収支状況を明らかにしうる完全な資料を提示されていたところ、右資料によれば、原告の昭和四六年ないし昭和四八年分の所得金額を実額により把握することが可能であつたから、推計課税の必要性はなかつた。

3  本件処分は、原告の総所得金額を過大に認定している。

三  よつて、本件処分の取消しを求める。

第三請求原因に対する認否

一  請求原因一の各事実は認める。

二  同二について

1  1(一)のうち、被告の行つた調査がその必要性を欠くこと及び被告が原告に対し調査の必要性を告知しなかつたことを否認し、主張を争う。(二)のうち、被告が原処分時において原告から原告の収支状況を明らかにしうる完全な資料を提示されていたこと及び反面調査の必要性もないのにいきなり反面調査に及んだことを否認し、主張は争う。

2  2のうち、原告から原告の収支状況を明らかにしうる完全な資料を提示されていたことは否認し、主張は争う。

3  3 は争う。

三  同三は争う。

第四抗弁

一  税務調査手続の適法性

1  税務調査の必要性

(四) 所得税法二三四条にいう「調査について必要があるとき」とは、確定申告に係る課税標準又は税額等が過少であるとの疑いが認められる場合だけではなく、広く右申告の適否すなわち申告の真実性、正確性を確かめることも含まれ、そのためにも質問検査等の調査をすることができると解すべきである。

(二) 原告が提出した昭和四六年ないし昭和四八年分の各確定申告書には収入金額及び必要経費の各欄に金額の記載がなかつた。ところで、所得税法における事業所得の金額の算定は、当年中の事業所得に係る総収入金額からその必要経費を差し引いて求めることになつている(同法二七条二項)のであるから、少なくともその算定の要素である総収入金額及び必要経費の数額が明らかとされなければならない。したがつて、被告においては、原告の申告が適正かどうかを判断するよりどころが無く、原告に対し調査をする必要があつた。

(三) 原告は、昭和四六年四月ころ肩書住所地に建物(以下「本件建物」という。)を新築し、昭和四八年二月には東京都三鷹市北野四丁目五〇番の七の土地(一二一平方メートル)を取得していた。そこで、被告において右取得のための各資金と申告所得金額の関連についても調査する必要があつた。

(四) 税務調査に当たり、調査の具体的理由、必要性を納税者に事前に告知しなければならない義務を定めた実定法上の規定はないが、被告の係官らは、原告に対する調査を行うに当たり、まず、原告の申告所得金額の正否を確認するために調査が必要である旨を告げたうえで帳簿書類の提示を求めたものである。

2  反面調査の適法性

(一) 反面調査は、所得税法二三四条一項三号で認められているが、その調査の順序、方法等については特に定められていないから、当該職員の合理的裁量により適宜これを実施することができるものである。

(二) 原告の指摘する反面調査の違法性の内容は、その前提事実が相違しているうえ、原告の指摘する事実をもつてしても、そのことから直ちに反面調査が違法になるものでない。

二  推計課税の必要性

1  被告所部の係官鈴木哲郎(以下「係官」という。)は、昭和四九年七月三一日、調査のため原告宅に赴いた。同日は、原告は不在で原告の妻坂田澄江に面接した。しかし、同人から原告の確定申告の所得金額の計算方法の説明が得られなかつたので、同人に対し、原告の昭和四六年ないし昭和四八年の三年間の各確定申告の所得金額の計算の基礎となつた帳簿書類を取り揃えておいてもらいたい旨及び次回は同年八月七日に再度訪問したいので、都合のよい時間を電話連絡してもらいたい旨要請した。

2  しかし、右八月七日まで電話連絡はなかつたので、係官は原告に電話し、同年九月一〇日に約束をとり、被告所部の調査官一名を同行して原告宅へ臨場したが、同日には右1の帳簿書類の提示がなかつた。

3  その後、原告から連絡のあつた同月一九日に、原告宅に臨場したところ、原告の昭和四八年分についての売上メモ並びに仕入及び外注費の一部に関するものと認められる領収書、判取帳等の提示を受けたが、昭和四六年分及び昭和四七年についての帳簿書類は一切提示がなかつた。

ところで、原告の妻が提示した右昭和四八年分の売上メモなるものは、大学ノートに得意先ごとに工事現場別の売上金額及び入金額を記載したものであるが、この記載事項によつても、売上金額の請求年月日並びに入金方法(現金、小切手、手形の別)及び期首・期末の残高等が不明であり、また、仕入先からの仕入金額に関する請求書あるいは領収書といつた書類についても、その支払方法の別、期首・期末の残高等が明らかでなく、更に、外注費に関する判取帳等にいたつては、受取人の住所の記載もなく、原告の支払つたものかどうかさえ疑わしいものであつたことから、原告においては、一般に、正確な会計帳簿を備え付けていないものと思慮されるばかりか、存在した右各書類の信ぴょう性(真実の取引に基づいて正確に作成されたものかどうか)を判断するに足りる入出金等の資料もなく、しかも、これが原告のした取引の全部を証する書類とは到底認められなかつたのである。

そこで、被告は、原告の取引銀行あるいは取引先について反面調査を行い、原告の売上金額等を把握したのである。

4  係官は、原告の提示に係る書類の取引金額と反面調査によつて把握したそれとの間に相違するものについての原告の説明や昭和四六年分及び昭和四七年分についての帳簿書類の提示を求める等のために、同年一〇月一五日原告宅に臨場したが、原告から右具体的な説明も、帳簿の提示もなかつた。

5  係官は、反面調査等によつてはその実額を把握することに限度がある必要経費について、原告に対して直接調査する必要があると認め、原告に面接できる都合のよい日を電話連絡するよう依頼したところ、原告は、同年一二月二一日を指定してきたが、その後、民商の斎藤と名乗る者から、「調査は一二月二六日に延期してもらいたい。」と右指定の日を変更され、更に、同月二四日になつて「年内には会えない。」との電話連絡があつた。係官は、同日原告に対し近日中に面接したい旨の電話連絡をしたが、応対した原告の妻は、「私のところは何も間違つていない。何も話すことはない。すべて調布民商の方で話してもらいたい。」と応えて、係官の要請に応じなかつた。

6  そこで、被告は、これ以上原告に対して調査を行つても、帳簿書類の提示及び質問に対する応答を期待することはできず、実額により所得金額を算出することは不可能であると判断し、原告の所得に係る必要経費につき推計課税の方法によつたものである。

三  昭和四六年分総所得金額 一二一〇万五〇一九円

1  事業所得金額 一一九五万五三〇九円

(一) 収入金額 一億六四一六万九二六〇円

(二) 売上原価及び一般経費 一億五一〇一万九三〇二円

売上原価及び一般経費は、その金額が不明のため、(一)の収入金額に、別表二1に掲げる東京都下北多摩地区を管轄する立川、東村山、武蔵野及び武蔵府中の各税務署の管内の原告と同程度の同業者(以下「類似同業者「という。)の平均経費率九一・九九パーセントを乗じて推計したものである。

(三) 特別経費

支払利息割引料 一一九万四六四九円

右は、多摩中央信用金庫三鷹支店(以下「多摩中央三鷹」という。)に対する手形割引料七六万二九七九円及び手形借入金利息二八万三八三三円の合計一〇四万六八一二円と三和銀行烏山支店(以下「三和烏山」という。)に対する手形割引料一二万一六五七円及び手形借入金利息二万六一八〇円の合計一四万七八三七円との合計金額である。

2  不動産所得金額 一四万九七一〇円

四  昭和四七年分総所得金額 一〇八九万九九一三円

1  事業所得金額 一一〇三万五三九一円

(一) 収入金額 一億五〇〇〇万二五〇〇円

(二) 売上原価及び一般経費 一億三八一九万七三〇三円

売上原価及び一般経費は、その金額が不明のため、(一)の収入金額に、別表二2に掲げる類似同業者の平均経費率九二・一三パーセントを乗じて推計したものである。

(三) 特別経費

支払利息割引料 七六万九八〇六円

右は、多摩中央三鷹に対する手形割引料二六万〇一六六円及び手形借入金利息三七万五一〇七円の合計六三万五二七三円と三和烏山に対する手形割引料七万一九六六円及び手形借入金利息六万二五六七円の合計一三万四五三三円との合計金額である。

2  不動産所得金額 二〇万〇三六〇円

3  譲渡所得損失金額(損失控除) 三三万五八三八円

五  昭和四八年分総所得金額 一三七二万六三四一円

1  事業所得金額 一四二五万一六七五円

(一) 収入金額 一億九一五四万六三一〇円

(二) 売上原価及び一般経費 一億七六一四万五九八六円

売上原価及び一般経費は、その金額が不明のため、(一)の収入金額に、別表二3に掲げる類似同業者の平均経費率九一・九六パーセントを乗じて推計したものである。

(三) 特別経費

支払利息割引料 一一四万八六四九円

右は、多摩中央三鷹に対する手形割引料五二万〇四五九円及び手形借入金利息四一万一三五三円の合計九三万一八一二円と三和烏山に対する手形割引料二万八八四二円及び手形借入金利息一八万七九九五円の合計二一万六八三七円との合計金額である。

2  不動産所得金額 一一万七四八一円

3  利子所得金額 三万三五七五円

4  譲渡所得の損失金額(損失控除) 六七万六三九〇円

六  推計方法の合理性

1  類似同業者抽出基準の合理性

(一) 被告が原告の係争各年度の「売上(工事)原価及び一般経費(以下「売上原価等」ともいう。)」を推計するに当たり適用した同業者率に係る類似同業者は、原告と同じ被告が管轄する武蔵府中税務署の管内並びに立川、東村山及び武蔵野の各税務署の管内(東京都下北多摩地区)に事業所を有する者であつて、かつ、次の<1>ないし<4>の条件に該当する個人及び法人を抽出したものである。

<1> 各年分において一二か月間継続して左官業を営んでいるもの

<2> 各年分につき青色申告書を提出しているもの

<3> 各年分の工事収入金額が原告のそれの概ね〇・五倍ないし二倍(以下「倍半基準」という。)の範囲内にあるもの

<4> 更正又は決定の処分を行つたもので推計により所得金額を認定したもの並びに不服申立期間又は出訴期間を経過していないもの及び不服申立て又は訴えの審理中のものを除外したもの。

(二) 原告は、類似同業者の中に原告の事業規模に達しているものは一つもない旨主張するが、類似同業者のうち、工事収入金額が原告のそれを超え、かつその二倍の範囲内にあるものは存在しなかつたにすぎない。しかし、原告のような左官業者の工事収入金額と経費率との間には、工事収入金額が大きいほど経費率が高いという相関関係が存在するとは認められないのであるから、たまたま抽出された類似同業者の工事収入金額が原告のそれを下回つていたからといつて、これによつて原告の所得金額が過大に算出されるわけではない。

また、原告のような左官業においては、事業所の立地条件は小売業ほど所得金額に与える影響は多くないし、一般に同業者率をもつて推計課税をする場合に、その推計をする者の事業所が所在する行政区画及びそれと同様な経済圏にあると認められる行政区画を順次拡大してその区域に事業所を有する同業者を収集することは、その収集範囲に恣意の介在する余地がなく、同業者の抽出に合理性を有する。

2  平均経費の合理性

(一) 類似同業者の売上原価等の額を算出するに当たつては、建物(事務所及び従業員宿舎に限る。)の減価償却費の額、地代家賃として支払つた金額(ただし、材料置場、倉庫又は駐車場の借料として支払つた金額を除く。)、支払利息割引料については、いずれも特別経費として控除すべきものとして減算し、貸倒引当金については、個人の場合、青色申告書を提出する者についてのみ認められるものであるから減算し、更に減価償却費については、個人の法定償却方法は定額法であるから、定率法によつて計算しているものは定額法により換算した。また、右1(一)の抽出基準により抽出された類似同業者は、いずれも法人であつたが、法人が代表者及びその妻に支払つた報酬、給与、賃金及び損金経理の賞与はいずれも損金から減算して売上原価等を算出した。

(二) 原告は、仕入及び外注費については実額によるべきであると主張するが、前記のとおり、仕入及び外注費についても推計をする必要性があつたものであつて、仕入及び外注費についてのみ推計ができないという根拠もない。ちなみに、被告が本件において売上原価等をまとめて推計計算することにしたのは、次のような理由によるものである。すなわち、事業を営む青色申告者が納税申告に係る決算書を作成するに当たつての費用記載方については、工事原価及びその他の経費について各項目ごとに、その費用の額を掲記することになつており、左官業における売上(工事)原価としては、材料費(仕入)、労務費、外注費及び経費(現場経費)等の各項目で構成されているところ、申告者間において、その各項目を計算する経理方法に差異が存する(例えば、労務費には工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金及び給料手当等が含まれるところ、これらを一般経費(一般管理費)の中の人件費に含めて経理したり、あるいは、常傭外注職人に対する外注費の支払額を外注費として経理しないで労務費に含めて経理する等)ことから、各項目ごとに細分して同業者率を算出してみても、その数値は当該各項目に係る正確な率を表現しているといえるものではない。したがつて、必要経費のうち工事収入金額と相関関係にあるすべての必要経費を合計した売上原価等について、同業者率を算出することとしたのは合理性がある。

原告は類似同業者の算出所得率に約三倍の開差がある旨主張するが、これは所得金額の算出した結果に基づくものにすぎなく、類似同業者の経費率を、その最大値の最小値に対する倍率における開差でみるならば、昭和四六年分で一・〇六倍、昭和四七年分では一・〇七倍、昭和四八年分では一・〇九倍にすぎないのであり、原告主張の事由だけから、右の経費率が当然に不合理となるわけではない。

七  本件処分の適法性

以上のとおり、本件各更正(ただし、いずれも異議決定及び審査裁決により一部取消し後のもの。以下同じ。)に係る総所得金額は、原告の各年分のそれの範囲内であり、本件各更正を前提として算出した無申告加算税(昭和四六年分。更正により増加する納付すべき税額の一〇〇分の一〇)及び過少申告加算税(昭和四十七年分及び昭和四十八年分。更正により増加する納付すべき税額の一〇〇分の五)の額は、本件各賦課決定(ただし、いずれも異議決定及び審査裁決により一部取消し後のもの。以下同じ)のそれと同一であるから、本件処分は適法である。

第五抗弁に対する認否、反論

一  抗弁一について

1  1(一)は争う。(二)のうち、原告が提出した昭和四六年分ないし昭和四八年分の各確定申告書には、収入金額及び必要経費の各欄に金額の記載がなかつたことは認め、その余は争う。(三)のうち、被告主張のとおり、原告が本件建物を新築し、土地を取得したことは認め、その余は争う。(四)のうち、被告の係官らが原告の申告所得金額の正否を確認するために調査が必要である旨を告げたことは否認し、その余は争う。

2  2(一)、(二)は争う。

二  同二について

1  1のうち、係官が被告主張の日原告宅に臨場したことは認め、その余の事実は否認する。原告の妻は原告の方から都合のよい日時を連絡する旨係官に告げ、係官はこれを了承したものである。

2  2の事実は認める。

3  3のうち、係官が被告主張の日に原告宅に臨場したこと及び原告側が係官に昭和四八年分の売上、仕入、外注費に関する帳簿書類を提示したことは認め、その余の事実は否認する。原告が係官に提示した帳簿書類は、昭和四六年分ないし昭和四八年分の売上、仕入、外注費のすべてに関する完全なものであつた。係官は、そのうち外注費のみを書き写すだけで帰署してしまつたのである。

4  4、5の事実は否認する。原告は、被告側から原処分のための調査期間中、いかなる質問も受けたことはない。

5  6は争う。

三  抗弁三(昭和四六年分総所得金額)について

1  (一)の事実は認める。(二)の事実は否認する。(三)のうち、被告主張の支払利息割引料については認めるが、特別経費がこれのみであることは否認する。特別経費には、第六(原告の主張)一4の額を加算すべきである。

2  2の事実は認める。

四  同四(昭和四七年分総所得金額)について

1  1(一)の事実は認める。(二)の事実は否認する。(三)のうち、被告主張の支払利子割引料については認めるが、特別経費がこれのみであることは否認する。特別経費には、第六(原告の主張)二4の額を加算すべきである。

2  2、3の各事実は、いずれも認める。

五  同五(昭和四十八年分総所得金額)について

1  1(一)の事実は認める。(二)の事実は否認する。(三)のうち、被告主張の支払利子割引料については認めるが、特別経費がこれのみであることを否認する。特別経費には、第六(原告の主張)三4の額を加算すべきである。

2  2ないし4の各事実は、いずれも認める。

六  同六について

1  類似同業者抽出基準の不合理性

(一) 被告が実際に抽出した類似同業者は、原告の工事収入金額の〇・五二倍から〇・九二倍までのものであつて、原告の事業規模に達したものは一つもない。これは、被告が原告の工事収入金額の二倍に達する同業者を抽出するという基準を自ら守らなかつたことを自白しているものである。

(二) 原告の事業所所在地は、東京都調布市にあるところ、類似同業者選定の範囲を北多摩地区全体に広げ、あるいは、同地区に限定したことについて、合理性が認められない。

2  平均経費率の不合理性

(一) 原告のような左官業者の売上原価等は、一般に仕入(材料費)、労務費(外注・従業員給与)のほか租税公課等少なくとも一〇余の経費項目によつて構成されているが、そのうち仕入及び外注費だけで全体の経費の九〇パーセント以上を占め、また、外注費だけでもその八〇パーセント以上に達するものである。したがつて、少なくとも仕入と外注費(特に外注費)について実額によらないで、経費の全項目を一切合切まとめて推計によることは合理性を有するとはいえない。

(二) およそ左官業者の所得又は原告程度の営業規模に達した業者の所得を売上原価等の平均経費率によつて推計すること自体が合理性を有しない。すなわち、被告の主張する類似同業者を一見して明らかなとおり、その算出所得率は、昭和四八年分で下限の四・一一パーセントから上限の一二・〇八パーセント(実に下限の三倍)にまでひろがつているのであつて、そのうちの最小値の近似例ばかりが抽出された場合と最大値の近似例ばかりが抽出された場合とを比べると、両者の間に生じる甚だしいことは明らかである。

七  同七は争う。

第六原告の主張

一  昭和四六年分の事業所得について

1  仕入金額は、実額による把握が可能で、その詳細は、別表三の1(昭和四六年分)に記載のとおり合計一七九三万六九七九円である。

2  外注費も、実額による把握が可能で、その詳細は、別表四に記載のとおり合計一億三一三八万六九一一円である。

3  一般経費 九五五万七四四〇円

右は、後記昭和四七年、四八年の各一般経費の合計額を右各年売上額の合計額で除して、売上げに対する一般経費率を算出し(〇・〇五八二一七)、これを昭和四六年の売上げに乗じて推計したものである。

4  特別経費 一六八万一四〇四円

(一) 支払利息として、多摩中央三鷹からの昭和四五年一二月一一日付け証書による借入金五〇〇万円(以下「四五年借入金」という。)の支払利息四〇万三三四三円を加算するべきである。右借入金は、原告が昭和四六年に新築した本件建物の建築資金の一部として使用したものである。そして原告は本件建物の一部を同年四月以降事業の用に供しているものである。

(二) 本件建物についての減価償却費は八万三四一二円(ただし、取得価額六六二万円、残存価額六六万二〇〇〇円事業所用建物の耐用年数二四に対応する定額法による償却率〇・〇四二、事業供用面積割合三分の1として、次の算式により計算したもの)が加算されるべきである。

(取得価額-残存価額)×償却率×事業供用面積割合

(三) 右(一)、(二)の合計額四八万六七五五円に抗弁三1(三)の額を加算すると、一六八万一四〇四円となる。

二  昭和四七年分の事業所得について

1  仕入金額は、実額による把握が可能で、その詳細は、別表三の2(昭和四七年分)に記載のとおり合計一四三四万七〇七九円である。

2  外注費も、実額による把握が可能で、その詳細は、別表五に記載のとおり合計一億一九七〇万五三〇一円である。

3  一般経費も、実額による把握が可能で、その詳細は、別表七の昭和四七年分の欄に記載のとおり合計九七八万八四五六円である。

4  特別経費 一一四万八三三六円

(一) 支払利息として、四五年借入金の支払利息二九万五一一八円を加算すべきである。

(二) 本件建物についての減価償却費として、右一4(二)の算式により算出された八万三四一二円が加算されるべきである。

(三) 右(一)、(二)の合計額三七万八五三〇円に抗弁四1(三)の額を加算すると、一一万八三三六円となる。

三  昭和四八年分の事業所得について

1  仕入金額は、実額による把握が可能で、その詳細は、別表三の3(昭和四八年分)に記載のとおり合計一九三三万三九三五円である。

2  外注費も、実額による把握が可能で、その詳細は、別表六に記載のとおり合計一億五三八五万四三八三円である。

3  一般経費も、実額による把握が可能で、その詳細は、別表七の昭和四八年分の欄に記載のとおり合計一〇〇九万六五〇六円である。

4  特別経費 一六六万八四八九円

(一) 支払利息として、四五年借入金の支払利息二万四二四〇円及び多摩中央三鷹から昭和四八年二月七日付け証書による借入金一二五〇万円(以下「四八年借入金」という。)の支払利息八四万八六一七円の合計八七万二八五七円の半分である四三万六四二八円を加算すべきである。四八年借入金は、原告が昭和四九年に取得した東京都調布市緑ケ丘二丁目一二番三六の土地(以下「本件土地」という。)の取得資金の一部として使用したものであり、原告は本件土地を事業の用に供しているものである。

(二) 本件建物の減価償却費として、右一4(二)の算式により算出された八万三四一二円が加算されるべきである。

(三) 右(一)、(二)の合計額五一万九八四〇円に抗弁五1(3)の額を加算すると、一六六万八四八九円となる。

第七原告の主張に対する認否、反論

一  原告の主張一1ないし3の事実は否認する。4のうち、原告が四五年借入金を借り入れたこと、これが本件建物の建築資金の一部に使用されたこと及び原告主張の支払利息の支払があつたことは認めるが、本件建物が原告の事業の用に供されていることは否認し、原告主張の支払利息及び建物減価償却費が必要経費になることは争う。

二  同二ないし3の事実は否認する。4のうち、原告主張の支払利息の支払があつたことは認めるが、原告主張の支払利息及び建物減価償却費が必要経費になることは争う。

三  同三1ないし3の事実は否認する。4のうち、原告が四八年借入金を借り入れたこと及び原告主張の各支払利息の支払があつたことは認めるが、四八年借入金が本件土地の取得資金の一部に使用されたことは不知、本件土地が原告の事業の用に供されていることは、否認し、原告主張の支払利息及び建物減価償却費が必要経費になることは争う。

四  なお、本件では、そもそも実額主張は許されない。すなわち、被告は、原告の協力が得られなかつたためやむを得ず推計課税をしたのであつて、この推計課税を予儀なくされた責任はすべて原告にある。このような原告が訴訟の段階に至つて初めてその取引に関する膨大な資料を提示していわゆる実額主張をすることは、適性かつ公平な課税という租税法の基本原則にもとるものというべきであるから、許されてはならないのである。

第八証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

二  原告は、本件処分は、違法な税務調査手続に基づくものであるから、取り消されるべきであると主張する。

1  思うに、税務調査に際して、刑事法令違反、公序良俗違反などが認められるといつた例外的な場合は、ともかく、一般に、税務調査手続の違法は、課税処分の取消事由たる瑕疵に当たらないと解するのが相当である。しかるところ、原告主張の税務調査手続の違法は、仮にそれが認められるとしても、到底右の例外的な場合に当たらないものであるから、本件処分の取消事由とならないものというほかはない。

2  のみならず、本件では、次の述べるとおり、税務調査と手続に原告の主張のごとき違法な点もない。

すなわち、税務調査の必要性を欠くとの点については、所得税法二三四条一項所定の質問調査権は、調査権限を有する税務職員において、具体的諸事情にかんがみ客観的必要があると判断される場合にこれを行使することができ、納税申告の適否を確認する必要がある場合も当然これに含まれると解されるところ、原告が提出した昭和四六年分ないし昭和四八年分の各確定申告書には、収入金額及び必要経費の各欄に金額の記載がなかつたとの当事者間に争いがない事実だけを取上げてみても、被告において原告の右各確定申告の適否を確認する必要性が存在したことは明らかであつて、税務調査の必要性がなかつたとは到底いい難いところである。また、調査の必要性を原告に告知しなかつたとの点については、右の告知は法律上の要件とされていないから、仮に右の告知を欠いたとしても、そのことにより当然に税務調査が違法となるわけでないことはいうまでもない。更に、反面調査の許容限度を逸脱したとの点についても、所得税法二三四条一項三号による反面調査の範囲、程度、時期等は、調査を行う税務職員の合理的な選択にゆだねられていると解されるところ、後記三2、で認定の事実関係からすれば、被告所部の係官が行つた反面調査がその許容限度を逸脱したとは到底いえないのである。

3  そうすると、原告の前記主張は、いずれにせよ採用することができない。

三  推計課税の必要性の存否について検討する。

1  係官が、まず昭和四九年七月三一日に原告宅に臨場したことは当事者間に争いがなく、証人堀田暢及び同坂田澄江の各証言によれば、係官が次回同年八月七日原告宅に臨場することになつたが、時間については後日原告宅から連絡をすることになつていたことが認められる。そして、同日までに原告側が連絡しなかつたので、係官が原告方に電話連絡をし、約束のうえ、同年九月一〇日に原告宅へ臨場することになつたこと及び同日係官が被告所部の調査官一名を同行して原告宅へ臨場したが、原告の昭和四六年ないし昭和四八年の三年間の各確定申告の所得金額の計算の基礎となつた帳簿書類の提示がなかつたことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  その後同月一九日係官が原告宅に臨場したこと及び原告側が係官に昭和四八年分の売上、仕入、外注費に関する帳簿書類を提示したことは、いずれも当事者間に争いがなく、証人堀田暢、同坂田澄江及び同長田トシエの各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、同日に原告側が提示したものは、昭和四八年分の収支明細書を初め、売上を記載したノート(以下「売上ノート」という。)、仕入関係の領収書及び請求書、外注費関係の判取帳二冊及び領収書であり、係官は、これらの帳簿書類をざっと検討のうえ、必要とする部分を書き写して帰署したことが認められる(なお、証人堀田暢及び同長田トシエの各証言によれば、原告側は、同日の係官による調査は昭和四八年分についてのみであると考えていたため、同日には、昭和四八年分の関係帳簿書類を用意していたことが認められるのであるから、昭和四六年分及び昭和四七年分の関係帳簿書類については、それ自体としては提示がなく、ただ、昭和四八年分の関係帳簿と同一簿冊中に、昭和四六年分及び四七年分についても記載されているといつたものについて、その限りで提示があつたともいい得るに過ぎないものと推認され、この推認を覆えすに足りる証拠はない。)

3  証人堀田暢の証言によれば、次の事実が認められる。

係官は、右により書き写してきたものを慎重に検討したところ、売上については、売上ノートに記載されていた額と収支明細書に記載されていた額とは一致したものの、期首、期末の売上金の明細が不明であつたこと、仕入については、関係書類を総合すると収支明細書に記載されていた額と一致したものの、期首、期末の残高は不明であつたこと、一方、外注費については、外注先の住所が不明なものが多かつたうえ、判取帳と領収書とを集計したものが収支明細書の記載より一五〇〇万円程度過大になつていることが判明した。そこで、係官は、収支明細書に記載の原告の売上額について疑問を抱き、同年一〇月初旬から原告と取引のある銀行、住所が判明している外注先等について反面調査に着手したところ、原告の売上額は、収支明細書に記載されているものより大幅に上回るものであることが判明した。係官は、右過大な売上についての説明を原告に求め、併せて昭和四六年分及び昭和四七年分の帳簿書類の提示を求めるため、同月一五日に原告宅に臨場したが、原告は、売上漏れについては発注先と原告との間に中間業者が介在していると説明するだけで、具体的な説明をせず、また、昭和四六年分及び昭和四七年分の帳簿書類については提示がなかつた。係官は、更に反面調査を続行し、原告の必要経費分についての実額を把握することに努めたが、実額を把握するに至らなかつた。そこで、係官は、同年一二月中旬、原告に対し再度調査に応ずるよう求めたところ、原告の妻坂田澄江から同月二一日に調査に応ずるとの連絡があつたものの、その後「民商の斎藤」と名のる者から右二一日を二六日に延期するよう電話があり、また年内には会えないとの連絡があり、更に、係官からの原告に対する連絡に対し、原告の妻は、問題があるなら民商の方に話してもらいたい旨返答した。その結果、原告に対する昭和四六年分ないし昭和四八年分の事業所得の売上原価等について推計して更正することになつた。

4  以上1ないし3に認定の事実によれば、原告において事業所得の算出の基礎となる資料を提出せず(昭和四六年分及び昭和四七年分)、又は不充分な資料を提出しただけであつて(昭和四八年分)、しかも、被告の調査に協力する姿勢がなかつたものということができるから、原告の本件係争各年分の所得税の事業所得の金額に関し、推計課税の必要性があつたことが明らかである。

四  原告の本件係争各年分の所得税の総所得金額について判断する。

1  原告が左官業を営むいわゆる白色申告者であることは前記一のとおりであり、原告の本件係争各年分の事業所得にかかる収入金額(昭和四六年分が一億六四一六万九二六〇円、昭和四七年分が一億五〇〇〇万二五〇〇円、昭和四八年分が一億九一五四万六三一〇円)並びに事業所得以外の所得金額及び損失金額(不動産所得については、昭和四六年分が一四万九七一〇円、昭和四七年分が二〇万〇三六〇円、昭和四八年分が一一万七四八一円であること、利子所得については、昭和四八年分が三万三五七五円であること、譲渡所得の損失金額については、昭和四七年分が三三万五八三八円、昭和四八年分が六七万六三九〇円であること)については、当事者間に争いがない。

2  事業所得の売上原価等の推計

(一)  成立に争いのない乙第一ないし第八号証の各一、同第一三号証の一ないし八、証人北尾正彦の証言及びこれにより真正に成立したと認められる乙第一号証の二ないし四、証人林宗孝の証言及びこれにより真正に成立したと認められる乙第二五証の二ないし四、証人神谷栄吉の証言及びこれにより真正に成立したと認められる乙第三号証の二ないし四、証人南部浩の証言及びこれにより真正に成立したと認められる乙第四号証の二ないし四によれば、抗弁六1(一)、2(一)の被告主張の方法により、類似同業者を抽出し、その類似同業者の経費率が別表二1ないし3記載のとおりであることが認められ、右推計の方法は、その類似同業者の抽出基準、売上原価等の算定方法において合理的なものと認めることができる。そして、類似同業者の平均経費率は、昭和四六年分が九一・九九パーセント、昭和四七年分が九二・一三パーセント、昭和四八年分が九一・九六パーセントとなることを計算上明らかである(ただし、いずれも小数点以下切り下げ)。

(二)  原告は、類似同業者の中に原告の事業規模に達しているものは一つもない旨主張するが、原告のような左官業者の工事収入金額と経費率との間に、工事収入金額が大きいほど経費率が高いという相関関係が存在することを認めるに足りる証拠はないのであるから、類似同業者がすべて原告の事業規模に達していなかつたとしても、そのことが直ちに原告に対して不利益をもたらすものというのはできないし、また、右(一)掲記の各証拠によれば、原告の事業規模が大規模なものであつたため、類似同業者の中には、工事収入金額が原告のそれを超え、かつ、その二倍の範囲内にあるものは存在しなかつたことが認められ、被告が主張する倍半基準に自ら従わず、恣意的に類似同業者を抽出したものということもできない。したがつて、原告の右主張は、右(一)の平均経費率の合理性を左右するものではない。

また、原告は、原告のような左官業者の売上原価等においては、仕入及び外注費が全体の九〇パーセント以上を占め、外注費だけでも全体の八〇パーセント以上に達するのであるから、経費の全項目を一切合切まとめて推計するのは合理性を有するものではない旨主張するが、原告の仕入及び外注費の比率が他の類似同業者と比較して特段の差異があることを基礎づける原告の営業についての特殊事情等につき何らの主張もされていない本件においては、原告の右主張は、右(一)の平均経費率の合理性を左右するものとはいえない。

更に、原告は、類似同業者の算出所得比率を比較すると、最大と最小とでは約三倍の開差がある旨主張するが、これは経費率が九〇パーセント前後という極めて高率であることに起因するものと解されること、類似同業者の経費率の開差でみるならば、係争各年分を通して一・一倍未満であることが計算上明らかであることに照らせば、算出所得率の右の開差が直ちに右(一)の平均経費率の合理性を左右するものとはいえない。

(三)  そこで、右1の原告の本件係争各年分の事業所得の収入金額に、右(一)の平均経費率を乗じて売上原価等を算出すると、昭和四六年分が一億五一〇万九三〇二円、昭和四七年分が一億三八一九万七三〇三円、昭和四八年分が一億七六一四万五九八七円となる(ただし、いずれも円未満四捨五入)。

3  売上原価等の実額認定の可否

ところで、原告は、本件係争各年分の事業所得に係る売上原価並びに昭和四七年分及び昭和四八年分の一般経費は、実額で把握でき、また、昭和四六年分の一般経費は昭和四七年分及び昭和四八年の実額の一般経費から正確に推計できるとし、右2(三)の推計により算出した金額より多額の売上原価等の額を主張するので、これについて検討する。

(一)  原告の右主張に対し、被告は、本件では、右主張のような実額は許されてはならない旨主張するが(原告の主張に対する認否、反論四)、原告の右主張が信義則に反するとか、本件訴訟において時機に後れて提出されたものであるとかいつた特段の事情が認められない限り、原告の右主張が許されないと解する根拠は見当たらないところ、被告の主張は右の特段の事情の主張としてなお不十分であり、また右の特段の事情を認めるに足る証拠もないから、被告の右主張は採用することができない。

(二)  原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一、二号証、証人坂田澄江の証言及び原告本人本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告が営業に関し記帳している会計帳簿は、売上ノートのみであつて、他は、仕入、外注費及び一般経費について記帳している会計帳簿(現金出納帳を含む。)は存在しないことが認められる。なお、証人斉藤文清(第二回)の証言中には、原告が日時を追つて取引等を記録した手順を有している旨の部分があるが、その手帳は、本訴において証拠として提出されていないことに鑑みると、右証言は容易に惜信しがたい。そうすると、右仕入、外注費及び一般経費についての実額は、もつぱら原始書類によつて判断するほかないことになるが、この場合には、右書類が取引に接着して作られ、かつ完全に保存されているとともに、それが仕入、外注費及び一般経費について記帳がされた会計帳簿と同程度ないしそれ以上に信用性のあるものでなければならないことはいうまでもない。

(三)  まず、仕入の実額の立証のために提出された原始書類について検討する。証人坂田澄江の証言によれば、仕入については、仕入先の請求書による請求に対し、原告の妻である坂田澄江が小切手等で支払をし、領収書を受け取つていたことが認められるところ、右領収書は、昭和四六年分として甲第五七号証の四七の一ないし五一、昭和四七年分として甲第四三号証の二ないし三九、昭和四八年分として甲第一五号証の二ないし六を書証として提出するのみであつて(なお、請求書については、昭和四六年分の一部とみられる甲第五九号証の一ないし五、第六〇号証の一ないし三、第六一号証の一ないし六のみが提出されている。)、右各書証が信用できるものであるとしても、それらだけでは原告の主張する仕入金額をすべて立証するに足りるものではない。

右に加えて、仕入に関する領収書記載の各金額の支払の後に、何らかの精算等があつた可能性も否定できないが、前記のとおり仕入に関する会計帳簿が存在していないため、その確認ができないなど、右各領収書だけでは、その全額が真実仕入金額となるかどうかを検証するには、不十分というべきである。

また、原告は、仕入金額を立証するものとして甲第一五号証の一を提出しているが、同書証は、単に仕入金額の合計をメモ書しているものにすぎず、到底立証の資料として採用できるものではない。

なお、原告が別表三ないし3で「仕入相殺額」として主張するものについては、これを立証する書証として、昭和四六年分について乙第一〇号証の一、昭和四七年分について乙第一一号証、第一二号証の一、昭和四八年分について乙第一〇、第一二号証の各二が存在するが、右各書証により立証できるものは、右仕入相殺額のうちの一部のみである。もつとも、証人小笠原英之の証言及び弁論の全趣旨によれば、右仕入相殺額の全部について、一応被告もこれを是認していることが認められないわけではなく、これによれば、その分については仕入額が存したものということができる。

(四)  次に、外注費の実額の立証のために提出された原始書類について検討する。

(1) 証人斉藤文清(第一、二回)及び同坂田三重の各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、外注費については、一般的には、原告が仕切書を作成し、仕切書に基づいて外注費を支払つていること、外注費の支払に際しては、判取帳に受領者の署名(記名)拇印を徴するが、中には領収書を受け取ることがあることが認められる。そして、原告は、外注費を立証するものとして、仕切書、判取書、領収書を提出している。そこで、右各原始書類について、順次その信用性をを検討する。

(2) 右のうち、仕切書は、原告が作成するものであるから、仕切書だけでは、真実それに記載された金額が外注先に支払われたことまでを立証するに足りるとはいい難いところである。

そして、原告が書証として提出している仕切書の種類は、昭和四六年分(甲第五七号証の三ないし四五)が七種類、昭和四七年分(甲第四四号証の三ないし四一)が三種類、昭和四八年分(甲第一六号証の二ないし二二)が三種類と数種類に及んでいるところ、このように数種類の用紙を使用すること自体に不自然さが見受けられ、また、その点に加えて、原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一六号証の二、四ないし二二及び原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和四二年に東京都三鷹市中原三丁目二番二九号で株式会社坂田工業をしたことがあつたが、翌年には解散して、その後同所で個人で左官業を営んでいたものであるところ、昭和四六年には住所を原告肩書地に移転したものであるにもかかわらず、昭和四八年分の仕切書として右の株式会社坂田工業の法人名、所在地、電話番号を印刷したものを使用していることが認められ(なお、昭和四六年分及び昭和四七年分については、右様式の用紙を使用した形跡はない。)、このような用紙を使用したことは、相当の不自然さが見受けられる。また、官署作成部分の成立は当事者間に争いがなく、その余の部分は、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第一八号証及び弁論の全趣旨によれば、昭和四六年分の原告の仕切書の中に、昭和四九年六月以降に製造販売された用紙を使用しているものがあることそして、右用紙を使用した仕切書は、原告が本件係争年分の所得税についての税務調査に備えて昭和四九年後半以降に作成したものであることが認められ、右事実からすれば、右の仕切書は、外注の時点ではなく、相当後になつて税務調査対策として作成されたものであるから、極めて信憑力が薄弱なものといわざるを得ない。更に右事実と先に認定した仕切書の使用用紙に不自然さのあることを合せ考えると、その他の仕切書の中にも右同様、外注の時ではなく、後日作成されたものが少なからず存在するものではないかとの疑いを払拭し去ることはできない。

なお、原告が仕切書の存在だけで外注費の実額を主張しているものは、昭和四六年分に係るものについてのみであるが(別表四の該当月の欄を○印で囲んだもの)、右の実額の主張は、以上に述べた点から到底これを認容するわけにはいかない。

(3) 判取帳(甲第三号証の一、二、四、第四号証の一ないし三、五、第五号証の一、七、八、第六号証の一、五、六)及び領収書(甲第一六号証の二三、第四四号証の四二、四四の一ないし二一、第五七号証の四六、四八の一ないし三三)は、少なくとも相手方の記名等があるものであるから、それらの記載の金額が相手方に支払われたものと一応考えることができるが、右金額の支払の事実があつたとしても、その支払原因を客観的に明らかにする資料が存しない以上、支払原因が外注費以外であることも十分に考えられるのであるから、それらの証拠だけではそれによる支払が直ちに原告の事業所得に係る外注費であると即断するには疑問が生じるところである。

更に、原告の実額主張は、単に判取帳及び領収書の日付をもって外注費の額を主張しているものであるところ、基本的には、売上に対応する当該外注費の支払原因が生じた時点をもつて必要経費の計上時期であると解すべきところ(したがって、本来は、外注費が支払われた日を主張すべきではなく、当該外注費の支払原因を生じた取引日、取引内容を主張すべきであると解される。)、右判取帳及び領収書の支払時点を捉えてみても、それが当該年分の必要経費であるのか即断はできないといわざるをえない(とりわけ一月の支払分については疑問が生じるところであり、また、次に述べるとおり、一月の支払分について対応する仕切書が存在していないことが少なくないのである。)。

したがつて、基本的には、判取帳又は領収書とこれに対応する仕切書があつて始めて当該年分の外注費として認容することが可能となるといわざるをえない。しかるに、原告主張の外注費のうち少なくとも別表四ないし六のうち、「証明する証拠の号証」欄の書証番号を○印で囲んだ分は、判取帳又は領収書に対応する仕切書が提出されておらず、その対応額は、本件係争各年分とも相当額にのぼつている(なお、右の○印で囲んだ分は、判取帳又は領収書に対応する仕切書のないことが明らかであると認められるものにつき例示的に示したもので、それ以外のものにつき、対応する仕切書が存在することを意味するものではない。)

(4) 判取帳によつて判取りされている金額については、これに対応する仕切書が作成されているものもすくなからずあり、原告本人尋問の結果中には、対応する仕切書が存在しないのは、仕切書の紛失、作成の省略(失念)等の理由によるものであるとする部分があるので検討する。

まず、そもそも仕切書の紛失と作成の省略(失念)とを区別しうる基準も不明確であるうえ、仕切書が紛失したということ自体、相当に不自然である。しかし、その点はさておくとしても、同一人に対する外注のうち、ほとんどの月の仕切書が存在するのにある一か月分ないし数か月分だけ仕切書が存在しないという場合があるが、この不自然さは看過できないものである(例えば、別表四ないし六のとおり、昭和四六年分についていえば、船本に対する仕切書は、一月分から一二月分までのうち、八月分のみが存在しない。昭和四七年分についていえば、作守俊夫に対する仕切書のうち、二月分から一二月分まで存在するのに一月分のみが存在しない。昭和四八年分についていえば、緒方富士夫に対する仕切書のうち、一月分から一一月分まで存在するのに一二月分が存在しない。なお、以上は各年分につきいずれも一例を挙げたに過ぎない。)。そして、仕切書が存在しない月については、その月の判取帳の領収額が外注費であるか否かを正確に確認することが困難であることは先の述べたとおりである。

そのうえ、本件係争各年分とも、判取帳に判取りされた月ないし翌月に対応する仕切書が一応存在するにもかかわらず、その支払われたとされる金額に対応する記載が仕切書にないものがあり、その詳細は、別表八のとおりであるところ、その不自然さは看過できるものではなく、右事実によれば、たとえ判取帳に判取があつても、その金額が真実支払われたものではないのではないか、あるいは、かりに支払があつたとしても、外注以外を原因として支払われたものであつて、原告の必要経費とならないものが含まれているのではないか、との疑問が生ずるのを妨げることはできない。

更に、本件係争各年分とも、仕切書と判取帳の記載とが対応していると認められるものであつても、仕切書に記載されている金額と判取帳に判取りされている金額とが必ずしも一致していないものが少なからずあり、とりわけ仕切書に記載された金額より多額の判取りがされている分が少なくとも別表九のとおり見受けられるのであるが、その超過額分についての支払原因の合理的な説明ないし立証が必ずしも十分ではなく、判取帳の判取額をもつてこれをすべて外注費と断ずることは、この点からも困難であるというほかはない。

(五)  一般経費の立証のために提出された原始書類について検討する。

(1) 原告は、昭和四八年分の一般経費のうち、甲第一八号証の四の公租公課、同号証の三の水道光熱費については、原始書類に相当するものを一応提出しているものの、それは、当該年分の一部のものであつて、書類の存在しない分については、推計計算をしている。また、昭和四七年分についても、水道光熱費及び車両費の各一部については、単に推計計算によつている。更に、昭和四六年分の一般経費については、原告の主張自体、昭和四七年分及び昭和四八年分の一般経費額からの推計である。

以上の点は、原告の一般経費の実額主張が、完全な実額主張によるものではないことを意味し、原始書類自体が整備して存在しているものでないことを推認せしめるものである。

(2) 原告提出の原始書類の中には、単に原告のメモ書きに過ぎないもの(詳細は別表十の1のとおり)、小切手のミミだけのもの(詳細は別表十の2のとおり)、出金伝票だけのもの(詳細は別表十の3のとおり)があり、いずれも原告においていつでも作成記載できるものであり、これらに対応する領収書、会計帳簿等が存在しない限り、これらの信用性のあるものとして取り扱うことはできないといわざるをえない。

証人坂田澄江及び同斉藤文清(第一回)の各証言中には、右の各書類記載の出金が、真実当該科目の出金である旨供述している部分があるが、容易に惜信することができない。

(3) また、原告提出の原始書類の中には、日付が記載されていないものがあり(詳細は別表十の4のとおり)、そこに示されているものが当該年分の必要経費といえるか疑問が生ずるものがある。

証人坂田澄江は、右各書類は、日付のある領収書等と同一の袋に入れられていた旨供述するが、容易に惜信できない。

(4) 更に、原告提出の原始書類だけではなく、それが原告の左官業の収入に対応する必要経費に該当するか疑問を生じるものがあり、とりわけ別表十の5に記載の分については、原告の家事関連費ではないかとの疑問があり、右疑問を払拭するに足りる証拠はない。

(六)  以上、仕入、外注費及び一般経費に係る各原始書類について検討の結果、原告が提出した証拠にはいずれも多大の疑問があり、これを原告の売上原価等の実額認定の証拠として直ちに採用するわけにはいかず、原告の事業所得に係る売上原価等の実額主張は、仕入額のうち相殺額についてはともかく、その余の仕入、外注費及び一般経費については本件全証拠によるも原告の実額主張を認めるに足りないというべきである。

(七)  したがつて、原告の本件係争各年分の売上原価率等は実額により認定できず、前記2(三)の推計額によるほかはない。

4  事業所得に係る特別経費

(一)  昭和四六年分について

(1) 原告の多摩中央三鷹に対する手形割引料七六万二九七九円及び手形借入金利息二八万三八三三円並びに三和烏山に対する手形割引料一二万一六五七円及び手形借入金利息二万六一八〇円の合計一一九万四六四九円が原告の昭和四六年分の事業所得に係る特別経費に該当することは当事者間に争いがない。

(2) 原告は、本件建物の建築資金の一部として借り入れた四五年借入金の支払利息四〇万三三四三円及び本件建物についての減価償却費八万三四一二円が昭和四六年分の事業所得に係る特別経費であると主張するので判断する。

原告が四五年借入金を借り入れ、これが本件建物の建築資金の一部に使用されたこと及び昭和四六年分として原告の主張の利息の支払があつたことは当事者間に争いがない。そして、証人坂田澄江の証言によれば、原告は、本件建物の応接間を事務所がわりに使用していたことが認められ、また、成立に争いのない甲第四一号証の一ないし三によれば、原告に対する昭和四六年分ないし昭和四八年分の所得税の各更正についての審査裁決庁である国税不服審判所長は、審査裁決書において、本件建物の一部が原告の事業用に使用されていること及びその事業供用面積割合が三分の一であること並びに本件取得価額が六六二万円、残存価額が六六万二〇〇〇円であり、また、事務所用建物の耐用年数二四年に対応する定額法による償却率が〇・〇四二であることを認定していることが認められる。そして、審査裁決庁の右認定事実に反する特段の立証がない本件においては、右認定のとおりの事実があるものと考えられるのが相当である。

そうすると、まず、四五年借入金についての支払利息四〇万三三四三円のうち、本件建物が事業に供されている割合である三分の一については、これを原告の事業所得に係る特別経費と認めるのが相当であり、右金額は一三万四四四八円(ただし、円未満四捨五入)となる。また、本件建物についての減価償却費については、原告の主張一4(二)の算式により八万三四一二円が原告の事業所得に係る特別経費と認めるのが相当である。

(3) したがつて、右(1)の一一九万四六四九円と右(2)の合計二一万七八六〇円との総合計一四一万二五〇九円が原告の昭和四六年分の事業所得に係る特別経費となる。

(二)  昭和四七年分について

(1) 原告の多摩中央三鷹に対する手形割引料二六万〇一六六円及び手形借入金利息三七万五一〇七円並びに三和烏山に対する手形割引料七万一九六六円及び手形借入金利息六万二五六七円の合計七六万九八〇六円が原告の昭和四七年分の事業所得に係る特別経費に該当することは当事者間に争いがない。

(2) 原告は、右(一)(2)同様、四五年借入金の支払利息二九万五一一八円及び本件建物の減価償却費八万三四一二円が昭和四七年分の事業所得に係る特別経費であると主張するところ、四五年借入金につき昭和四七年分として原告主張の利息の支払があつたことは当事者間に争いがないことから、右(一)(2)同様、支払利息の三分の一である九万八三七三円(ただし、円未満四捨五入)と本件建物の減価償却費八万三四一二円が右特別経費と認められる。

(3) したがつて、右(1)の七六万九八〇六円と右(2)の合計一八万一七八五円の総合計九五万一五九一円が原告の昭和四七年分の事業所得に係る特別経費となる。

(三)  昭和四八年分について

(1) 原告の多摩中央三鷹に対する手形割引料五二万〇四五九円及び手形借入金利息四一万一三五三円並びに三和烏山に対する手形割引料二万八八四二円及び手形借入金利息一八万七九九五円の合計一一四万八六四九円が原告の昭和四八年分の事業所得に係る特別経費に該当することは当事者間に争いがない。

(2) 原告は、まず、右(一)(2)同様、四五年借入金の支払利息二万四二四〇円の半分相当額及び本件建物の減価償却費八万三四一二円が昭和四七年分の事業所得に係る特別経費であると主張するところ、四五年借入金につき昭和四八年分として原告主張の利息の利息の支払があつたことは当事者間に争いがないから、右(一)(2)同様、支払利息の三分の一である八〇八〇円と本件建物の減価償却費八万三四一二円が右特別経費と認められる。

(3) 原告は、更に、四八年借入金は、原告が昭和四九年に取得した本件土地の取得資金の一部と使用したものであり、その支払利息八四万八六一七円の半分相当額が昭和四八年分の事業所得に係る特別経費であると主張する。しかし、本件土地が原告の事業の用に供されていることを認めるに足りる証拠はなく、したがつて、右支払利息は、事業所得に係る特別経費とは認められない。

(4) したがつて、右(1)の一一四万八六四九円と右(2)の合計九万一四九二円の総合計一二四万〇一四一円が原告の昭和四八年分の事業所得に係る特別経費となる。

5  総所得金額

右1によれば、原告の事業所得に係る収入金額は、昭和四六年分が一億六四一六万九二六〇円、昭和四七年分が一億五〇〇〇万円、昭和四八年分が一億九一五四万六三一〇円であり、右2(三)によれば、その売上原価等は、昭和四六年分が一億五一〇一万九三〇二円、昭和四七年分が一億三八一九万七三〇三円、昭和四八年分が一億七六一四万五九八七円であり、右4(一)(3)、(二)(3)、(三)(4)によれば、その特別経費は、昭和四六年分が一四一万二五〇九円、昭和四七年分が九五万一五九一円、昭和四八年分が一二四万〇一四一円であるので、原告の事業所得は、昭和四六年分が一一七三万七四四九円、昭和四七年分が一〇八五万三六〇六円、昭和四八年分が一四一六万〇一八二円となる。

そして、原告の係争各年分の総所得金額は、昭和四六年分が右事業所得に不動産所得一四万九七一〇円(右1)を加算した一一八八万七一五九円、昭和四七年分が右事業所得に不動産所得二〇万〇三六〇円(右同)を加算し、譲渡所得の損失金額三三万五八三八円(右同)を控除した一〇一七万八一二八円、昭和四八年分が右事業所得に不動産所得一一万七四八一円(右同)及び利子所得金額三万三五七五円(右同)を加算し、譲渡所得の損失金額六七万六三九〇円(右同)を控除した一三六三万四八四八円となる。

五  右四5によると、本件各更正は、本件係争各年分の各所得金額の範囲内であるから適法である。

また、原告の昭和四六年分の所得税の申告が期限後であること、係争各年分の申告所得税額については前記一のとおり当事者間に争いがないところ、本件各賦課決定の無申告加算税額(昭和四六年分)及び過少申告加算税額(昭和四七年分及び昭和四八年分)は、右により適法な本件各更正により増加する納付すべき税額につき、昭和四六年分は一〇〇分の一〇(国税通則法六六条)を乗じた金額の無申告加算税額、昭和四七年分及び昭和四八年分は一〇〇分の五(同法六五条)を乗じた金額の過少申告加算税額(ただし、いずれも同法一一九条により一〇〇円未満切り捨て後のもの)と同一であることは計算上明らかであるから、本件賦課決定は適法である。

六  よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 加藤就一 裁判官塚本伊平は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 鈴木康之)

別紙一

1. 昭和四六年分

<省略>

2. 昭和四七年分

<省略>

3. 昭和四八年分

<省略>

別表二

1. 昭和四六年分同業者比率表

<省略>

別表二

2. 昭和四七年分同業者比率表

<省略>

別表二

3. 昭和四八年分同業者比率表

<省略>

別表三

1. 昭和46年分

<省略>

2. 昭和47年分

<省略>

3. 昭和48年分

<省略>

〔別表 四〕 46年度分 科目別証拠表

<省略>

〔別表 五〕 47年度 科目別証拠表

<省略>

〔別表 六〕 48年度 科目別証拠表

<省略>

別表七

<省略>

別表八

1. 昭和46年分

<省略>

2. 昭和47年分

<省略>

3. 昭和48年分

<省略>

別表九

1. 昭和46年分

<省略>

2. 昭和47年分

<省略>

3. 昭和48年分

<省略>

別表十

1. メモ書

<省略>

2.小切手のミミ(号証が変わるときは「、」枝番だけが変わるときは「、」以下同様)

<省略>

3. 出金伝票

<省略>

4. 日付のないもの

<省略>

5. 家事関連費との関係不明分

<省略>

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